背景

日本の電子産業を支える組込みソフトウェア分野では、現在技術者が大幅に不足しているといわれています。2007年に経済産業省とIPAが発表した「2007年版組込みソフトウェア産業実態調査報告書」によれば、現在日本全体で組込みソフトウェアに従事している技術者の数が約23.5万人であり、なお約9.9万人程度の技術者が不足していると報告されています。

この技術者の不足を補うために、多くの組込みソフトウェア開発が、国内外に外部委託されています。外部委託する際には、その会社やそこに所属する社員の技術力が重要なポイントとなりますが、組込みソフトウェアの知識や技術力、経験をきちんと測定する指標が存在しないことから、技術力をきちんと把握できずに発注してしまうケースが起きています。

その結果、委託先企業が十分な技術力を持たず、期待した品質のソフトウェアが得られず、トラブルになるケースが耳にされます。特に、コミュニケーションをとることが難しい、海外企業に委託する際は、そうしたトラブルが起きがちです。

こうした課題を解決するために、T-Engineフォーラムは(社)トロン協会と協力して、組込みリアルタイム技術者の技術力を認定するための、「トロン技術者認定試験」の制度を創設しました。トロン技術者認定試験は、T-Kernel、ITRON等の、組込みリアルタイムOSを使いこなし、組込みリアルタイムシステムのソフトウェアを実践的に開発する能力を認定します。

目的

  1. 組込みリアルタイムソフトウェア技術者に目標を示し、モチベーションを与えることで、その技術の向上に資すること。
  2. 組込みリアルタイムシステムの開発を手がける企業等が開発委託などを行う際に、技術水準を示す際に役立つよう客観的な評価の尺度を提供すること。
  3. 組込みリアルタイムソフトウェア技術者の採用を行う際に役立つよう客観的な評価の尺度を提供し、これを通じて、組込みリアルタイムソフトウェア技術者の社会的地位の確立を図ること。

試験のメリット

技術者にとって

  1. 自らの技術力を測る尺度にできます。
  2. 転職する際の客観的な尺度として利用できます。

企業にとって

  1. 社員に受験を促し、技術力を向上させることに対するモチベーションを上げることができます。
  2. 社員の技術力を正確に把握することで、社内のプロジェクト編成に役立てることができます。
  3. 開発業務をアウトソーシングする際に、委託先企業の技術水準の尺度とすることができます。
  4. 技術者を雇用するときに、技術者のスキルを同じ尺度で知ることができます。

試験要項(概要)

実施主体
主催:T-Engineフォーラム、協力:社団法人トロン協会
試験の主な対象
トロン仕様OSを利用する、または利用しようとしている、各企業における組込みリアルタイムシステム開発技術者
試験時間
90分
満点
100点(結果は合否判定ではなく、スコアの提示となります。)
試験方法
マークシート方式(将来的にCBT方式でも実施予定)
言語
日本語(海外での試験実施に向けて、英語・中国語・韓国語等に対応予定)
受験料(税込み)
15,750円(一般)
12,600円(T-Engineフォーラム会員、トロン協会会員)
なお、紙に印刷された受験結果をご希望の場合は、一般16,800円、会員13,650円で受け付けます。
再受験について
本試験は、何回でも受験することが可能です。

出題方法

第1区分  組込みリアルタイムシステム基礎知識
出題数: 20問
点数: 60点(各問3点)
内容: 組込みリアルタイムシステムの基礎知識を問う
第2区分  ソフトウェア開発知識
出題数: 5問
点数: 40点(各問8点)
内容: ソフトウェア開発知識を中心に問う

出題領域

大領域 内容
組込みリアルタイムの基礎 組込みシステムの特徴、リアルタイムシステムの特徴、タスク管理基礎、タスクスケジューリングの基礎、割込み処理基礎、同期・通信基礎、記憶管理基礎、時間管理基礎、RTOS基礎、HWアーキテクチャ基礎、SWアーキテクチャ基礎、他
組込みソフトウェア開発の基礎 開発環境基礎、組込み開発基礎、プログラミング言語基礎、データ構造とアルゴリズム基礎、デバッグ基礎概念、ソフトウェア工学基礎、信頼性基礎・テスト・検証手法、他
トロンアーキテクチャの基本概念 「オープン」の概念、ゆるやかな標準化、T-Engine, T-Kernelの意義、サービスコールやエラーコードのネーミングコンベンション、他
ハードウェア分野 T-Engine、μT-Engine、他
RTOS分野(ITRON・T-Kernel・μT-Kernel) トロン仕様の概念、タスクモデル・タスク管理機能、同期・通信機能、時間管理機能、メモリプール管理機能、アドレス管理機能、省電力機能、デバイス管理機能、デバッグサポート機能、標準デバイスドライバ、個別デバイスドライバ、他
ミドルウェア(T-Kernel/Standard Extension, TCP/IP、他) コンピュータネットワークの基礎概念、ファイルの基礎概念、プロセスの基礎概念、T-Kernel/Standard Extension (TKSE)の概略、TKSEプロセスモデル、TKSE同期・通信機能、TKSEファイル管理、TKSEイベント管理、TKSE応用、ITRON TCP/IP API仕様、他
マルチプロセッサ マルチプロセッサ・マルチコア技術の概略、AMP T-Kernel、SMP T-Kernel、他
その他 ソフトウェアライセンス、法令、ビジネスモデル、組込みリアルタイム分野の教育トレーニング、標準化、他

問題の作成手順と品質保証

トロン技術者認定試験では、組込リアルタイムシステムを専門とする大学教員や、産業界の高度な技術者等から構成される「試験問題作成委員会」と、「試験問題評価委員会」を組織し、試験問題の作成とチェックを厳正に行い、問題の高い品質を保っています。