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桑原 健(くわはら たけし)
NECエレクトロンデバイス
はじめに
現在、NECエレクトロンデバイスでは、坂村教授が提唱する、「次世代のスーパー開発環境」T-Engine/μT-Engineの製品開発を進めています。本号から2号にわたり、NECが提供するT-Engine(μT-Engine)開発ボードn101/n301Mのハードウェアをご紹介いたします。本号【前編】では、
・T-Engine(n101)/μT-Engine(n301M)の特徴
・n101ボードのハードウェア
・n301Mボードのハードウェア
・Vrプロセッサロードマップ(コラム)
と題し、NECのT-Engine(n101)/
μT-Engine(n301M)ボードの概要を、解説します。次号【後編】では、
・n101/n301Mのメモリ、I/Oマップ
・n101/n301M共用の拡張コネクタ仕様
・拡張ボード開発のガイドライン
・Vrアーキテクチャの概要(コラム)
と題し、実際にボードを購入し開発をスタートさせようという方を対象に注1)、一歩踏み込んだ技術解説を進めていく予定です。
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写真1 T-Engine(n101)とμT-Engine(n301M)
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T-Engine(n101)/ μT-Engine(n301M)の特徴
NECのT-Engine/μT-Engineのコンセプトは、「“次世代”組込み機器開発のスーパープラットフォーム」、「同一アーキテクチャでT-Engine/μT-Engineを同時に開発」です。このためn101/n301Mでは、コンピュータの心臓部であるCPUブロックには、それぞれ余裕の演算処理性能とメモリ容量を実装しています。また、CPUブロックとインタフェースブロックの接続を共通化し、T-Engine/μT-Engine規格が必須とするインタフェース機能の差異を、ハード/ソフト両面において、最低限の変更で吸収できるよう配慮して設計されています。 表1に、T-Engine(n101)/μT-Engine(n301M)の主要スペックをまとめました。
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表1 T-Engine(n101)/μT-Engine(n301M)の主要スペック
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●T-Engine(n101)
T-Engine(n101)は、Vr5500マイクロプロセッサ注2)とVrc5477コンパニオンチップを中心に、標準T-Engine仕様で規定されているすべての機能をスマートに実装しています。動作周波数400MHzのVr5500プロセッサは、800MIPSの処理性能をたたき出し、MPEG4のソフトウェアデコーディングも、フルフレーム(QVGAサイズ)でラクラクこなすことができます。
n101では、eTRONインタフェース、拡張バスインタフェース(16ビットLOCALバス)などのインタフェースを、ボード上のPLD内に機能実装することによって、将来のインタフェース機能の強化/拡張や、ASIC/System On Chipへの機能取込みにも対応します。
またNEC独自の機能拡張として、赤外線リモコン受信機能(LCDモジュール上のIR受光部を使用)、アナログRGB信号出力、32ビットカードバス対応、デバッグ専用シリアルインタフェース(1ch)の追加を行っています。
●μT-Engine(n301M)
μT-Engine(n301M)は、Vr4131マイクロプロセッサを中心に構成しています。Vr4131は低電力で高性能な64ビットの4130CPUコアにSDRAMメモリコントローラとPCIインタフェース等を集積したチップで、消費電力が極めて少ないのが特徴です。
μT-Engine(n301M)では、Vr4131が内蔵していないインタフェース機能はすべて、n301Mボード上のPLD内に機能を実装していますので、将来のインタフェース機能の強化・拡張や、セットの量産化に向けたASIC/System On Chipへのインタフェース機能の取込みにも、スマートに対応することができます。
特に、MMCインタフェース、CFインタフェースに関しては、MMC/SD両対応インタフェースへ機能拡張注3)することによって、インタフェース性能を強化するなど、お客様のアプリケーションに合わせて、機能を最適化することが可能です。
NECのT-Engine(n101)/μT-Engine(n301M)は上記それぞれの特徴に加えてさらに、
・拡張バスインタフェース仕様が共通なので、拡張ボードを相互に使用することができる。
・拡張バスインタフェースにPCIバスを採用しているので、多様なI/Oデバイスを安価に入手できる。
・T-Engine/μT-Engine共通のインタフェースブロックは、回路仕様を共通としたことで、ソフトウェアコンポーネントを共有できる。
・PLDの空き領域を使って、ユーザカスタム回路をPLDに追加実装することができる。
という、共通の特徴を持っています。
注1)T-Engine/μT-Engineの開発キットは、2002年11月にパーソナルメディアより発売予定です。
注2)Vr5500プロセッサのアーキテクチャと最新情報は、本誌次号の「後編」で詳しくご紹介します。
注3)SDカードインタフェース対応は、個別にライセンス契約が必要です。
付録:NECのT-Engine(n101/n301M)を超解剖!
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| ●T-Engineボード(n101) |
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T-Engine(n101)CPU面(実物大:85×120mm)
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T-Engine(n101)裏面(実物大:85×120mm)
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(1)CPU:Vr5500-400(NEC)
(2)ノースブリッジ:Vrc5477-100(NEC)
(3)LCDコントローラ:RAVIN-E(NEC)
(4)PCMCIAコントローラ:R5C478(RICHO)
(5)周辺機能PLD:XC2S150(Xilinx)
(6)DIPスイッチ
(7)eTRONチップソケット
(8)シリアルコネクタ
(9)N-Wireコネクタ
(10)拡張コネクタ |
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(1)メインメモリ(128Mバイト)
(2)LCD用VRAM(32Mバイト)
(3)FlashROM(16Mバイト)
(4)PCMCIA(カードバス)ソケット
(5)LCDモジュールコネクタ
(6)USBコネクタ
(7)電源コネクタ
(8)AUDIOコネクタ
(9)電源スイッチ
(10)割込みスイッチ
(11)ハードウェアリセットスイッチ
(12)シリアルコネクタ(デバッグ用)
(13)LED
(14)RGB出力コネクタ
(15)オーディオCODEC(NEC)
(16)PLD用ISPコネクタ |
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| ●μT-Engineボード(n301M) |
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μT-Engine(n301M)CPU面(実物大:60×80mm)
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μT-Engine(n301M)裏面(実物大:60×80mm)
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(1)CPU:Vr4131BGAモジュール(NEC、タンバック)
(2)周辺機能PLD:XC2S150(Xilinx)
(3)MMC/SD両対応ソケット
(4)eTRONソケット
(5)シリアルコネクタ
(6)電源コネクタ
(7)PLD用ISPコネクタ
(8)電源スイッチ
(9)リセットスイッチ
(10)LED |
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(11)N-Wireコネクタ
(12)CFソケット
(13)拡張コネクタ |
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T-Engine(n101)ハードウェアの詳細
ここでは、ブロック図(図1)を参照しながら、T-Engine(n101)の回路機能・実装仕様を解説します。
●CPUブロック
n101のCPUブロックは、Vr5500マイクロプロセッサ、Vrc5477コンパニオンチップ、FlashROM、SDRAM、クロックドライバチップで構成しています注4)。
・Vr5500(コードネーム:Sapphire)は、NECの64ビットマイクロプロセッサです。2ウェイスーパースカラアーキテクチャを新たに採用し、現行製品(μPD30550-400)で、800MIPSの処理性能をたたき出します(高速版の開発も順調に進んでおり、2003年末には、1GHzを上回る製品を提供できるめども立ってきました)。
・Vrc5477(コードネーム:LUKE)は、Vr5500プロセッサ用のノースブリッジチップです。SDRAMメモリコントローラ、PCIブリッジ、LOCALバスブリッジ機能に加え、USBホストインタフェース、AC97CODECインタフェースなどのインタフェース機能を備えています。
・FlashROMには、64MビットNAND型FlashROMを2個使用し、16Mバイトを実装しています。
・SDRAMは、256MビットSDRAMを4個使用し、128Mバイトを実装しています。
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写真2 NEC製T-Engine(n101)に、日立製作所製のLCDパネルモジュールを接続した様子
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●インタフェースブロック
T-Engine(n101)のインタフェースブロックは、
・Vrc5477に内蔵されている周辺機能を使って実現しているもの
・ボード上のPCIバスにASSPを接続して実現しているもの
・PLD内に回路を構成して実現しているもの
があります。
・シリアルインタフェース
NS16550互換のシリアルインタフェースです。384000bpsの転送速度までサポートします。Vrc5477のシリアルインタフェース機能を使っています。
・オーディオインタフェース
ライン出力(ステレオ2ch)、ヘッドマイクセット用入出力(マイク入力1ch、イヤホン出力1ch)をサポートします。サンプリングレートはチャンネルごとに、最大44.8KHzまで可能です。オーディオCODECチップには、μPD63315(AC97インタフェース対応オーディオCODEC)を使用し、Vrc5477のAC97インタフェースを介して接続します。
・USBホストインタフェース
USB1.1互換のシリアルインタフェースです。Vr5477に搭載されている、NEC標準のUSBホストIPを使っています。
・カレンダークロック
バッテリーバックアップ付きのカレンダークロックです。CPUボード上に実装したスーパーキャパシタにより、CPUボードへ電力を供給しない状態で2日間、動作させることができます。また、アラームクロック出力は、CPUボードの電源を切断した状態(シャットダウン)から再起動するためのトリガとしても使用することができます。
・eTRONインタフェース
eTRONチップ接続用のインタフェースです。eTRONチップ用のSIMソケットは、PLD内部に実装された専用シリアルインタフェースを介して、LOCALバスに接続しています。
・タッチパネル(TP)インタフェース注5)
LCDモジュール上に実装されたタッチパネルコントローラ(TI製、ADS7843E)と通信を行うインタフェースです。PLD内部に実装したシリアルインタフェースを介して、LCDモジュールコネクタに接続しています。
・キーPADスキャンインタフェース注5)
LCDモジュール上に実装されたキースイッチ状態をスキャンするためのインタフェースです。最大15個(3×5)のスイッチキーの状態を検出することができます。
・LCDインタフェース注5)
T-Engine標準仕様のLCDモジュールに画像表示を行うためのインタフェースです。表示コントローラには、μPD72255Y(開発コード:RAVIN-E)を使用し、800×600の解像度までサポートします。また、NEC独自の追加機能として、RGB出力コネクタを設けましたので、外部ディスプレイを接続することも可能です。
表2に、日立−NEC共通のLCDパネルモジュール用コネクタの信号アサインを示しました。
・PCMCIAインタフェース
PCMCIA2.1準拠のカードスロットインタフェースです。カードコントローラR5C475(RICHO製)をn101ボード上のPCIバスに接続しています。R5C475は、PCMCIAに加えてカードバス(Card-32)カードもサポートしていますので、n101ボードではカードバス対応カードも使用することができます。
●拡張バスインタフェース
T-Engine(n101)の拡張バスには、PCIバス、16ビットLOCALバス、電源、電源制御用信号がアサインされています注6)。表3に、拡張バス信号アサインを示しました。
・PCIバス
32ビット33MHzのPCIバスです。最大3つまでの、PCIマスタデバイスを接続することができます。
・LOCALバス
16bitLOCALバスです。低速デバイスをシンプルなインタフェースで接続するのに適しています。
・電源・電源制御
T-Engine(n101)の動作電源は、VBATピンを介して、拡張ボードからメインボードへ供給することも、逆に、メインボードから拡張基板に供給することも可能です。
各ボード(CPUボード、拡張ボード)は、それぞれ必要な電源を、VBATより生成する仕様となっています。
表2 日立製作所-NEC共通のLCDパネルモジュールコネクタの信号アサイン
青:LCDインタフェース
緑:タッチパネル(TP)インタフェース
オレンジ:キーPADスキャンインタフェース
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表3 拡張バス信号アサイン
(青:PCIバス、緑:16ビットLOCALバス、オレンジ:電源制御、網掛け:電源)
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注4)NECでは、これらのCPU機能ブロックを50mm角のモジュール基板に実装したCPUモジュール製品(ただしSDRAMは64Mバイト)も別途用意しています。
注5)タッチパネル、キーPADスキャン、LCDインタフェースの信号/コネクタ仕様は、日立製作所製T-Engine(h101)と共通の仕様になっています。同じLCDパネルモジュールを相互に接続することが可能です。
注6)拡張バスインタフェース仕様の詳細に関しては、本誌次号の「後編」で解説させていただきます。
μT-Engine(n301M)ハードウェアの詳細
ここでは、ブロック図(図2)を参照しながら、μT-Engine(n301M)の回路機能・実装仕様を解説します。
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図2 μT-Engine(n301M)のブロック図
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●CPUブロック
μT-EngineのCPUブロックには、Vr4131マイクロプロセッサ、FlashROM(16Mバイト)とSDRAM(32Mバイト)を、23mm角(厚さ2mm)サイズ基板に実装した、Vr4131BGAモジュール(問い合わせ先:株式会社タンバック http://www.tanbac.co.jp/)を使用しています。
●インタフェースブロック
μT-Engine(n301M)のインタフェースブロックは、シリアルインタフェース以外のすべての機能は、Vr4131マイクロプロセッサの32ビットLOCALバスに接続したPLD内に機能を実装しています。
・シリアルインタフェース
NS16550互換のシリアルインタフェースです。384000bpsの転送速度までサポートします。T-Engine(n101)のシリアルインタフェースと同じものです。
・カレンダークロック
バッテリーバックアップ付きのカレンダークロックです。n101のカレンダークロックと同じものです。
・eTRONインタフェース
eTRONチップ接続用のインタフェースです。n101のeTRONインタフェースと同じものです。
・コンパクトフラッシュインタフェース
CF仕様のストレージデバイスに対応します。電源回路は、活栓挿抜にも対応しています。
・MMCインタフェース
マルチメディアカードに対応します。電源回路は活栓挿抜にも対応しています。カードソケットとボード上配線は、SDカードにも対応できるよう設計されていますので、PLD回路の書換えにによって、MMC/SDカード両対応に拡張することができます注7)。
●拡張バスインタフェース
μT-Engine(n301M)の拡張バス仕様は、T-Engine(n101)の拡張バスとまったく同じ仕様です。
注7)SDカードインタフェースをご使用いただくには、個別にライセンス契約を締結する必要があります。
まとめ
以上、前編では、11月に発売されるNECのT-Engine(n101)/μT-Engine(n301M)のハードウェアについて、解説してまいりました。
NECでは、お客様の最終製品開発のリファレンスデザインとして、T-Engine(n101)/μT-Engine(n301M)ボードデザインをご活用いただけるよう、回路図、PLDの内部回路情報は積極的に開示していきます。
また、n101/n301MボードのCPU機能のみをコンパクトにまとめたプロセッサモジュール製品の提供や、T-Engineアプライアンスボード(T-Engineをベースに開発したお客様の最終製品)の共同開発など、ボード開発サポート業務を進めます。
さらに、お客様のカスタムロジックやT-Engine標準I/F機能を取り込んだASICやプロセッサ内蔵System On Chip製品の開発など、お客様のニーズに合わせた半導体製品の開発にもいっそう力を入れて取り組んでいきます。
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